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【SF】チャイナ・ミエヴィル『言語都市』は主筋は『アバター』だけどぜんぜん違う

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言語都市|チャイナ・ミエヴィル

魅力的な設定、手に汗握るメインストーリー…だがしかし

 出す作品が全部、なんらかの文学賞を受賞するイギリスの鬼才チャイナ・ミエヴィルの9作目の長編『言語都市(原題:Embassy Town)』をようやく読むことができた。
 『ペルディード・ストリート・ステーション』『都市と都市』『クラーケン』『ジェイクを探して』と読んできたけれど、あいかわらず読みにくい。一般的な本の2倍くらいの読書時間がかかる印象。
 でも、そこに描かれる異様な世界はとても魅力的で、心惹かれてしまう。
 『言語都市』もたっぷり重厚、内容たっぷりで、読後はたっぷりの満足感が残った。

 今回は、人類が宇宙に進出してかなりたった時代。二つの口があって同時に2つの音を発する言語を操る異星人アリエカ人が登場する。
人類は、二人で一つの言語を表現できるよう「大使」という存在をクローン技術で作り出し、アリエカ人とのコミュニケーションを成功させ、惑星アリエカに「エンバシータウン」という植民地を作っていた。
 一種のゆがんだ理想郷状態で均衡する惑星に、人類はある謀略をしかけてくる。混乱する異星人社会、分裂する人間側、存亡の危機に立たされる植民地、入り乱れる人間模様、残額描写を含む異星人との壮絶な戦闘シーン、仕掛けられる大逆転劇…。
こう書くと映画『アバター』みたいだ。手に汗を握るエンターテインメント大巨編。
 だが、みんな読め~! とはとても書けないミエヴィル節は健在。むしろパワーアップ(『ヴェルディード』の頃は、まだ生やさしかったんだな)。
ミエヴェルの作品において、これらの要素はおそらく骨ですらない。むしろ外骨格にすぎない。

現実よりも水面に映る景色を描く作家

 その創作パワーのほとんどは、ストーリーよりも社会や行動、思考や感情を描写するのに使われているのだ。
 私は、ミエヴィル作品を読むと、水面に映っている景色を描写しているみたいだ、といつも思う。
 たとえば、湖畔で、屈強な騎士が一騎打ちをしている。激しい戦いだ。今、一方の騎士の剣が、もう一方の騎士の腕を切り落とした!
 というようなシーンでも、ミエヴィルはそうは書かない。湖水の面に移る、波や波紋に乱された景色や、その時、水面を乱す風や鳥や魚を描くことで、騎士の血統という目を見張るシーンの裏に隠された意味を、見いだそうとしている、そんなイメージだ。
 ぼやけ、乱れ、観る者を翻弄する水面の像も、様々な要素が一致するまさにその瞬間だけ、水面に移る像がおそろしくリアルになる。そこには、目では決して見えない、現実の裏に隠された何かが切り取られ、不気味な輝きを放ち出す。
 うーん、うまく説明できない。これは、もっと少し掘り下げてから、もう一度書くしかない。

ジャパニメーション化してほしいミエヴィル作品

 ミエヴィルが構築する世界や登場人物はとても魅力的である。
 ぜひ、日本でアニメ化してほしい。プロダクションIGとかマッドハウスが、きっちり作ってくれたら、本当にすごいものができると思う。
 個人的には『クラーケン』が希望(『都市と都市』はハリウッド向けか)。
 今回の『言語都市』では、あまりしっかりと描写されていないけれど銀河中に広がった人類を取り巻く環境は、かなり心惹かれる。ぜひ、シリーズ化してほしい。
 アリエカ人の生態、社会、コミュニケーション手段、姿かたちすらとても魅力的。だんだんかわいく見えてくる。
 人類が一生懸命コミュニケーションをとろうとし(それがいかに異様なやり方だろうとも)、エンバシータウンを絶妙のバランスで運営している姿も愛おしい。
 もっと、誰にもオススメできる作品だったら、もっとよかったのにー!

  • この記事を書いた人
永才 力丸

永才 力丸(えいさい・りきまる)

ライター、編集者。音楽雑誌、パソコン雑誌、ゲーム攻略本の企画編集を経て、直近は、ゲームシナリオ、イベント企画構成も行う。自称、日本一、乙女ゲームに造詣が深いおやじ。

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