ジュラシック・ワールド ★★★+.5
恐竜動物園シリーズ最新作は、初期に起きた事故や悲劇を乗り越えて再建され人気テーマパークとなった「ジュラシックワールド」が舞台。この設定自体は泣かせる。
ああ、俺も行きたい、今度こそうまく行ってほしい、と願う私の想いはあっという間に踏みにじられる。もともと、「ジュラシックパーク」はカオス理論が一つのテーマ。自然のような複雑系においては、初期値のちょっとした差が、最後には巨大な齟齬に育ち、それはもう止められない。カタストロフが起きるにきまっているのである。
一口で言えば、この映画は、怪獣VS怪獣である。キングギドラとゴジラが戦う、それにモスラが手を貸す。怪獣だから、何を考えているのかはわからないが、何か共感できたような気がする。――これがすべてである。ラストの大小怪獣バトルはよい。とても楽しかった。
だから、人間はそえもの。恐ろしい怪獣に追われ、踏みつぶされ、パニックになっていればいい。
だがしかし、それにしても人間側のドラマが弱い。逃げ回ってばかりだし、オーウェンだって何か役に立ったのか。恐竜とちょっと仲良しになったくらい。少年たちのおばさんクレアなんて役立たずもいいとこ。あれで、運営責任者か。
恐竜たちのリアルなグラフィック、生態の一部を想像させる細やかさもあって、これは見応え十分。人間ドラマは、おまけくらいのつもりで観れば十分楽しめる。
個人的には、クレアの秘書さんがかわいそうでならない。
バケモノの子 ★★★+0.8
細田守監督の最新作。『おおかみ』は母親のドラマで、今作は父親の物語か、と勢い込んでみたが、まあはずれではないにしろ鑑賞後の味わいは大きくことなる。
結論から言えば、観ている間はとても楽しめた。細田監督の『ラピュタ』か、と勝手な感想を抱きながら観た。
『サマーウォーズ』の「OZ」を思わせる、個性豊かなバケモノどもが集まる渋天街がともてよい。こういう魅力的な世界観を作り上げる手法、細田監督の真骨頂だと思う。住んでみたくなる。
これが渋谷の裏側にある、というのもいい。街の裏に隠された街、という幻想的、妄想的なあやうさはなくて、そこはちょっと残念。渋谷と行き来できるという設定優先な印象。
キャラもいいし、バトルも見応えあって楽しい。ヒロインもかわいい。
だが、見終わってからちょっと変な感触が残る。
一口で言えば、少年の成長物語なんだと思うが、その行き着く先がとてつもなく現実的なのだ。連の極めて現実に絡めとられた世界に戻る選択は、はっきり言って驚いた。
語り始めるとネタバレになるので、曖昧な言い回しになってしまうが、私が思うに、細田監督は「バケモノのいる渋天街よりも、人間界のほうがよほど恐ろしく危険な場所で、連は熊徹と渋天街で熊徹で過ごしたことで、そこに戻り暮らす勇気と力を得た」ということを言いたいんだよな。きっと。違うのか。
私たちは自信を持っていいのかもしれない。どんな勇者でも太刀打ちできないほど危険で厳しい現実という名のバトルフィールドを、毎日生きのびているのだから。
『おおかみ』と対比すると、もっといろいろと見えてくるような気がするが、この稿はとりあえずここまで。