レポート

パラボラアンテナ尽くしの1日~「臼田宇宙空間観測所」と「野辺山宇宙電波観測所」に行ってきた~ (1)

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野辺山宇宙電波観測所 45mm電波望遠鏡
 長野県にある「臼田宇宙空間観測所」と「国立天文台 野辺山宇宙電波観測所」に行ってきた。

まずは「臼田宇宙空間観測所」から

 長野県佐久市、人里離れた山中に置かれた日本最大、直径64メートルの反射鏡(アンテナ部分)を持つパラボラアンテナ、そこが「臼田宇宙空間観測所」である。
 地球への帰還中、電力が不足して通信が途絶していた「はやぶさ」の微弱な電波を捕らえた施設、と言えばピンと来る人も多いのではなかろうか。
 はるか遠く宇宙空間を旅する探査機が送り出す電波はとても微弱だ。それを、確実につかむためには、人の生活から生まれる電波は雑音となる。謎の電波をキャッチしたと大騒ぎしたあげく、結局は近くの家の電子レンジが発した電波だった、という実話もあるくらいだ。
 「都市雑音」と言われる妨害電波の影響を抑えるために選ばれたのが、国道141号線沿い、小海線臼田駅近くの下小田切交差点から山中に入り、山道を進むこと10キロ以上という場所だった。 
マップを掲載する。もし、観測所以外何も表示されていなかったら、縮尺の倍率を上げてほしい。人里離れたところにあることがよくわかると思う。
 

 人家どころか田畑すら見当たらずない森の中を「ホントにこんなところにパラボラアンテナがあるのか」と不安になりながらひたすら進む(車1台は十分走ることのできる道幅だが狭いところがあるので注意)。ところどころある案内板が心の支え。
 あと1キロくらいのはず、と思った時に、木々の隙間からアンテナの上部が顔を出す。木々の向こうに顔を出す巨大な人工物。胸が高鳴る。

臼田宇宙空間観測所
 最後のつづら折りの坂道を登ると、観測所が突然現れ、見上げるばかりのパラボラアンテナが眼前にそびえ立つ。
 すぐにも近くによりたいところだが、まず受付で登録を済ませる。受け付けさえすれば見学は無料。小さいけれど、宇宙好きにはグッとくる展示室もある。
 ただし、大きすぎて敷地の中から全容をカメラにおさめるのが難しい。下記の写真は18mmのレンズで、門のすぐ横で撮影したもの(向かって左下にある建物が観測棟で、ここはもちろん立ち入り禁止)。

臼田宇宙空間観測所
 大きさが実感できないと思うので、人が写っている画像を掲載。
 臼田宇宙空間観測所
 運用開始は1984年。地球軌道を離れて、惑星や小惑星、彗星などの観測を行う深宇宙探査機からのデータ信号を受け取るために作られたアンテナである。
 もう20年以上、この山の上から宇宙の彼方から届く、雑音の中に隠れた微弱な信号に、ただ耳を澄ませてきた。
 極めて繊細で細密な作業をしてきた巨人、とでも言えばいいだろうか。
 都会に行けば、このアンテナより巨大なビルはいくらでもたっているだろう。だが、メカメカしい迫力は別格だ。
 竣工した戦艦大和を見た人々も、同じような感慨を抱いたのではなかろうか。
 この巨大なアンテナが、電波源を探して首を上下し、脚部についた車輪により回転するのである!
 訪問時は動いてはいなかったが、冷却装置の音だろうか、終始、ウィーンという重い音が響いていた。「こいつ生きてるぞ」という感じで胸熱である。

敷地内に置かれた太陽系の模型

 敷地内には、太陽から木星の大きさと、それぞれの間の距離を縮小した模型が置かれている。

臼田宇宙空間観測所 太陽系模型
 木星までなのは、土星と木星の距離が離れすぎていて敷地内に収まらないため。
 太陽系から木星までのまでの距離は、太陽から火星までの距離の2倍。土星までの距離は、太陽系から木星までの距離の2倍もあるのだ。
 よく見る、太陽系の惑星が等距離の同心円状に並んでいる図は、便宜上距離をはしょっているのである。
 敷地に置かれた模型を見ると、そのスケール感がよくわかる。
 この惑星の配置図だが、現在、サイトに掲載された構内マップとは異なるので注意。
 http://www.jaxa.jp/about/centers/udsc/pdf/udsc_map_j.pdf
 駐車場側に一列に並び直され、太陽と地球の距離が明らかに短くなっている。立ち入り禁止区域を広げたときに、配置を変えたのだろう。
 約半分くらいに縮んでいるので、資料には55億分の1とあるが、少なくとも距離に関しては100億の1くらいにはなっているような気がする。
 惑星の大きさの縮尺も、調整されているのだろうか。

臼田宇宙空間観測所
臼田宇宙空間観測所

 パラボラアンテナと巨大建造物が好きなら絶対楽しめる。逆に興味がない方が一緒の場合、場が白ける可能性が高い。
 なんせ、狭い山道を苦労して走ってきたのに、気のきいた売店も、おしゃれなカフェもないのだから(ベンチはあるけれど)。しかも行き止まりなので、延々来た道をまた戻らなければならない。
 行くときは、ぜひ同好の士と。無理なら、事前によーく説明して了解をとっておくことを進める。

 あまり興味のない人と一緒なら、次に紹介する「野辺山宇宙電波観測所」がオススメ。
 清里のすぐそばなので気軽に行けるし、近くにはJR鉄道最高地点もある。何よりも、いろいろなサイズ、様々な形状のパラボラアンテナを見ることができる。
 「パラボラアンテナ尽くしの1日~「臼田宇宙空間観測所」と「野辺山宇宙電波観測所」に行ってきた~ (2)」に続く。
  
 臼田宇宙空間観測所の活動内容や見学時間等の詳細は公式サイトで。受付でもれるリーフレットのpdf版も掲載されている。
 JAXA 臼田宇宙空間観測所

  • この記事を書いた人
永才 力丸

永才 力丸(えいさい・りきまる)

ライター、編集者。音楽雑誌、パソコン雑誌、ゲーム攻略本の企画編集を経て、直近は、ゲームシナリオ、イベント企画構成も行う。自称、日本一、乙女ゲームに造詣が深いおやじ。

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