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2016年 夏から秋に読んだ本 ~ 『民のいない神』『世界の終わりの七日間』『ロックイン-統合捜査-』『ギフテッド』ほか

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日曜日の夕方

2016年の夏から秋に読んだ本のまとめ。
twitterでとばしたネタの再録です。

民のいない神』ハリ・クンズル


★★★★+1/2
読み終えるのがおしくなる傑作。アメリカはモハヴェ砂漠に立つ三本の奇岩。19世紀から21世紀まで、それぞれの時代の狭間で苦闘する人物たちの物語が複雑に絡み合い、砂漠の奇岩に集約していく。現実と非現実が奇岩を軸に対立し、そして入り交じる。
ハリ・クンズル『民のいない神』。とてもミステリアスな物語だけれど、未知と遭遇のデビルズタワーのような奇岩は、何もしかけてこない。そこに立っているだけ。人は悩み、迷い、自ら奇岩の陰にとらわれてしまう。人は哀しいね。しばらくしたらまた読み返したい(時間がほしい)。

世界の終わりの七日間』ベン H ウィンタース


★★★★+1/2
地上最後の刑事』『カウントダウンシティ』に続く三部作の完結作。小惑星の落下による終末まで一週間。未来も希望も失った最後の日々、それでも捜査をやめない主人公パレスが哀しい。
胸にしみる痛々しくも静かで、せつない世界の終わり。もうミステリだSFだとか、ジャンル分けするのもむなしい大傑作。
第一作が文庫化されたけれど、三冊まとめて一気に読みたい傑作。
ちなみに、文庫版のカバーはこちら。悪くないけれど、ちょっときれいすぎるかな。

ロックイン-統合捜査-』ジョン・スコルジー


★★★★
この作者の腕達者ぶりには舌をほんとに巻く。あらすじを読んで「こんなもんかな」と想像する面白さの常に上を行く。『老人と宇宙』なんて、びっくりしたもの。
今回は、意識はあるのに体を動かせなくなる(ロックイン)病気が蔓延し、精神とロボットを接続する技術が急速に普及した時代を背景にしたSF青春ミステリー。
ヤングアダルト風のさわやかタッチだが、スケールはなかなか大きく、時代が大きく変革する端境期の緊張感も漂って、最後まで楽しく読める。

ギフテッド』山田宗樹


★★★+1/2
『百年法』の作者による、超能力者と人類の軋轢もの。
よくある展開のようだが、ミソは、通常、超能力者は密かに目覚め、人類がそれに気づき徐々に対立が始まるるものが多いが、本作は超能力者”候補”を「ギフテッド」としてすでに世間一般が認識しているところ。ヘイトスピーチ、ヘイトクライムを受ける側が超能力者”候補”という切り口でもある。
既読感はあるが、キャラ描写や語り口は見事で、面白さは抜群。読んで損はない作品。

年刊日本SF傑作選 アステロイド・ツリーの彼方へ

★★★★
もう安定のでき。日本SF短編は豊穣の時代にあることだなぁ。
作品の出来も去ることながら、同時代感が心地よい。
書いている人たちと、同じ時間を共有し、同じ世界を見ているのだ、という連帯感というか安心感。
穏やかな休日の夕方に飲むビールのようだ。

トワイライトテールズ』山本弘


★★★★
MM9シリーズの短編集。『生と死のはざまで』『夏の少女と怪獣と』『怪獣神様』『怪獣無法地帯』の4編。どの作品も舞台が海外なので、気特対はメンバーはほとんど活躍しない。発想や筋立ての制限がないせいか、バラエティ豊かで楽しい。『怪獣神様』が好き。
私が読んだのは軽装版だが、文庫版が『トワイライト・テールズ 夏と少女と怪獣と』のタイトルで出ている。
カバーはこんな感じ。

  • この記事を書いた人
永才 力丸

永才 力丸(えいさい・りきまる)

ライター、編集者。音楽雑誌、パソコン雑誌、ゲーム攻略本の企画編集を経て、直近は、ゲームシナリオ、イベント企画構成も行う。自称、日本一、乙女ゲームに造詣が深いおやじ。

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