クリード チャンプを継ぐ男 ★★★★+0.5
ロッキーの最大のライバルで盟友、アポロ・クリードの愛人の息子、アドニス。まとめてしまえば、ロッキーが彼を一人前のプロボクサーに育て上げる話。
でも、これがよい。泣いた、泣いた。
ラストシーンは当然。ほかにも、懐かしい街をアドニスがランニングするシーン、試合開始前に届く贈り物、もう胸が迫るところ数知れず。
実は、冒頭近く、アドニスがyoutubeで、父アポロとロッキーの試合シーンを見ながら、アポロの動きに合わせてシャドーボクシングをするシーンで、もうウルウルと来ていたのだ。
アドニスのキャラ造形がまたいい。
父アポロは誕生前に死亡。実母を失い、施設を転々とする不遇の少年時代を過ごしていたが、アポロの妻に引き取られた。暮らしは豊かになり、教育も受け、就職し、昇進もした。
だが、満たされない。会社も辞め、家も出て、一人プロボクサーを目指す。
彼をそれほど突き動かす動機は、今ひとつ見えてこない。大きすぎる父、アポロが重荷になっているんだろうな、程度に納得して見ていると、ラスト近くで、ぐっと来る。
アドニス、お前の苦しみの源はそこにあったのか、と。
短気だが素直で、才能はあるが不器用な男。そして優しい心根をもつ男。実に魅力的である。
この監督、手練れである。見事な世代交代劇を演出してくれた。
『ロッキー』シリーズを見てきた人なら必見。見てない人はどう感じるんだろう。周辺にいないので、ちょっと興味ある。
エベレスト ★★★★
エベレストものだが、『神々の山頂』ではないほう。1996年にエベレストで起こった大量遭難事件の映画化である。
経験の少ない一般登山家でも、金さえあればガイドと物資面のサポート、事前に整えられた登山路で、エベレストに挑戦できるようになった商業登山時代に起こった悲劇。一口で言えば、自然をなめた素人たちがしっぺ返しを受けた事件を、圧倒的な映像と俳優の迫真の演技によって、リアルに、非情に切り取っていく。
映画館では3D上映だったので、それはとんでもない迫力であったろう。
私は高所恐怖症なので、家の小さいテレビで見るのがちょうどよかったかも。そう思ってしまうほど、映し出されるエベレストの景色は美しく、恐ろしい(特に頂上。あの狭さはやばい)。
ストーリーは実話に丹念になぞっているようで、実に淡々と進む。とんでもないヒーローが出現して、奇跡的な救出劇が起こるわけではない。
だが、大自然の猛威の中に立つ登場人物たちを、一人一人きちんと描いていくので、彼らが頂上に達した時の喜びは、胸に来る。
そして、後半パーティーが次々と窮地に陥っていくともう目が離せない。
しかも、酸素不足や疲労でみなおかしくなっていくのも怖い。地上で無線を聞いているスタッフの絶望感はリアルだ。
そして何事もなかったように美しくそびえ立つエベレストの山々。
見応え抜群である。
とはいえ、もう一度見たくなるか、というと、ちょっとためらう。
2回目は、エベレストの風景だけを抜き出した編集版でいいかな。リアル過ぎて、救いがないんだもの。
ヴィジット★★★+0.8
シャマランが帰ってきた。『エアベンダー』や『』とか、CGバリバリの大作なんて彼には似合わないのだ。
今回は制作費6億円。
ちょっと肩の力を抜いて撮った『パラノーマル・アクティビティ』『REC』風のカメラ主観ホラー。
いいじゃん。シャマランは、こういうのが向いてるんだよ。
「こんなのどう?」と、楽しそうに撮影しているシャマランの姿が伝わってくる良作だ。
母親と絶縁状態にあったため、生まれてこの方、一度も会ったことのない祖父母の家で一週間を過ごすことになった姉弟の物語。
最初は楽しかった田舎の日々だが、祖父母の言動がどうもおかしい。最初は「お年寄りってこういうものなの?」程度の違和感が、やがて恐怖に変わっていく。
きちんと怖いのだが、どことなく笑ってしまうユーモアホラー。老若男女楽しめる作品だと思う。
タイトルバックを見て、私は「シャマランめ、何か越えたな」と思った。
次回作が楽しみだ。