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わが青春の萩尾望都~『萩尾望都SF原画展』に行ってきた

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萩尾望都SF原画展
 武蔵野市立吉祥寺美術館で開催中の『萩尾望都SF原画展 宇宙に遊び、異世界にはばたく』に行ってきた。

小さいスペースながら充実の展示内容

 吉祥寺美術館はファッションビルの一角にあり、たいへんこぢんまりしたスペース。しかも、驚くことに入場料100円!
 誤解がないようにあらかじめ書いて置く。100円ならば、十分満足の内容、などとコストパフォーマンスについて言おうとしているのではない。
 興味はあるけど吉祥寺まで行くのはなぁ、と思っている人の背中を押すためである。
 SFに絞っているので、『三月ウサギが集団で』とかの学園コメディ、長編『トーマの心臓 (小学館文庫)』、『アッシュ』とかはないけれど、『あそびだま』や『ウは宇宙船のウ (小学館文庫)』などブラッドベリ原作のコミカライズ、『11人いる! 』『東の地平 西の永遠』『百億の昼と千億の夜』『銀の三角 』『スター・レッド (小学館文庫)』などなどのタイトルに胸が動かされる人ならぜひ行くべき。
 もちろん、各タイトル数枚の原画展示で、もっと見たくなるけれど、それはそれ。その渇望感がよい。
 また、シーンの選び方が見事で、頭の中に置かれていた本がパラパラとめくられていくような感覚に陥った。
 『東の地平・西の永遠』など最終ページである。あのシーンは本当に好きなのだ。
 萩尾望都は、時間の流れと世界の広がりを表現するのがホントにうまいが、特にこの1枚はすばらしい。
 まあ、見ていただくのが一番。
 5月29日までなので、迷う時間はないですよ。
■萩尾望都 SFアートワークス

遠い少年の日を懐かしむ50代のオヤジ

 中学一年の時、妹が買っていた『別コミ』で『11人いる』を読んだのが初めての萩尾望都体験。
 それから、『ポーの一族』に入って『トーマの心臓』を読む。外国の映画を見ているような、おしゃれで鮮やかな色彩に彩られた物語と世界にもうクラクラしっぱなしだった。
 私のヨーロッパ観のかなり大きなところは、萩尾望都作品によって作り上げられたと言っていい。
 特に印象的だったのは、『トーマの心臓』でオスカーの兄貴が少年の頃、騒々しさに目を覚まして窓から外を見ると、古い街の街路を戦車が列をなして進んでいった、というシーン。
 夢の世界と現実がガッツリと結び合わされて、美しい異国の風景に現代の景色が重なった瞬間だった。
 『ウは宇宙船のウ』を初めとするブラッドベリ原作のコミカライズは、ちょうどSFにはまってブラッドベリ作品を読み出したところだったので、毎回感動しまくりだった。どの作品も、あまりに美しく哀しい。今も、フェイバリット作品の一つである。
 そして、『百億の昼と千億の夜』。光瀬龍の原作は中学校の時に読んでいたのだが、実はよくわからなかった。
 それが、阿修羅王という終わりなき戦いに挑む美少女とともに、コミック化された。わかりやすいし、キャラも魅力的だし、話が気宇壮大。
 もう夢中。ホントにこの作品は好きである。
 ここでも、最後の数ページの時空間が一気に広がる様は見事だ。

百億の夜と千億の夜 阿修羅王

光瀬龍原作『百億の夜と千億の夜』の主人公の一人阿修羅王のカットアウト

一番好きな作品は実は『6月の声』

 好きな作品だらけなのだけれど、一作だけ選べ、と言われると初期のSF短編『6月の声』なのである。
 これはもう出会った時の年齢(十代半ばの思春期中)とその時の感情のなせるわざなのである。主人公10歳のルセルと同様に、6歳年上のいとこエディリーヌに恋してしまったであろう(記憶は薄れているが、そういうことだろうと思う)。
 実に美しい短編なのだ。
 近未来のヨーロッパにある緑美しい田舎町。
 ルセルのいとこ、美しい16歳のエディリーヌは、家族に許可も得ず、帰るあてのない恒星間宇宙船の移民団に申し込む。参加者の名簿がメディアで流れたものだから、家族は大騒ぎ。
 「エディリーヌが外庭の芝刈り機を押すつもりだ」
 ルセルはエディリーヌに、なぜそんな遠くまで行くの、と問う。
 物語は、その問いに、エディリーヌはどう答え、ルセルはどう感じたか、という本当にシンプルで短いお話なのだけれど、ルセルを子ども扱いせず誠実に答えるエディリーヌの毅然とした態度と、語る言葉の純粋で美しさ、それを聞いた少年の胸にわき上がる嫉妬心。キラキラとした感情の奔流に私のハートは打ち抜かれた。
 そして、読後感に残るせつなさ。今も忘れられない。その時、私はルセルと一心同体になっていたのだろう。
 汚れちまった今読み返すと、エディリーヌは思い込みの激しいちょっと危ない女の子に見えないこともないけれど、胸に深く刻まれた想いになんら変わるものはない。
 この作品も原画展に展示されている。しかも、印象的なシーンばかり。企画者は、よーくわかってるのである!
 実家の倉庫に置きっぱなしのはずだから、今度持ってこよう。
 今は、小学館文庫版『A-À』に収録されているらしい。
A-A’ (小学館文庫)

 支離滅裂な文章になってしまった。まだまだ語れるが、この程度にしておく(誰も興味ないだろうし)。
 とにかく、『原画展』はよかった。これをきっかけに、何かプロジェクトでも立ち上がらないかな。
 個人的には、『百億の昼と千億の夜』のアニメ化を希望。動く阿修羅王を見てみたい!
 『モザイク・ラセン』までしか読んでいないので、最近作を読んで見ようと思った。

  • この記事を書いた人
永才 力丸

永才 力丸(えいさい・りきまる)

ライター、編集者。音楽雑誌、パソコン雑誌、ゲーム攻略本の企画編集を経て、直近は、ゲームシナリオ、イベント企画構成も行う。自称、日本一、乙女ゲームに造詣が深いおやじ。

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