※ 「パラボラアンテナ尽くしの1日~『臼田宇宙空間観測所」と「野辺山宇宙電波観測所」に行ってきた~ (1)」から続く
臼田から野辺山宇宙電波観測所へ
「臼田宇宙空間観測所」から国道141号線に戻り、ひたすら南下。野辺山駅を過ぎて「JR鉄道最高地点」のある交差点を左折、線路を渡って右折すると、木々の間にパラボラアンテナが見えてくる。
施設にある最大のアンテナ、45メートルの反射鏡を持つ電波望遠鏡だ。
臼田宇宙空間観測所は、巨大なパラボラアンテナがどんと立っていた(正確には少し離れたところに直径10mのアンテナが設置されている)。
一方、観光地清里にもほど近い長野県南牧村野辺山にある「野辺山電波観測所」には、大小たくさんのパラボラアンテナがあるのが特徴。
45m電波望遠鏡が1台、直径10mの「ミリ波干渉計」が6台、ぐっと小さくなって太陽電波強度偏波計(直径25cm~3m)が6台、電波ヘリオグラフ(直径80cm)が84台(!)と、展示用も加えれば大小合わせて100台を超えるアンテナがずらりと並んで壮観だ。
臼田のアンテナは宇宙探査船からの信号受信用のパラボラアンテナだが、こちらは電波天文学用のアンテナ。望遠鏡と言っても、見ているのは何万、何百万、何億光年先の星やガスが発する電波。だから筒形な光学式望遠鏡とはちがい、パラボラアンテナを使う。光だけではわからない宇宙の姿を解明するのが目的なのだ。電波天文学については、施設サイトの「電波天文学入門」がイラスト中心でわかりやすい。
八ヶ岳を臨むことができる施設は、広々としていて季節感も感じられ、散策にもぴったりである。ちょうどタンポポが咲いていた。
見学者向けの説明パネルも充実しているので、家族連れでも十分楽しめる。
もちろん、入り口で受け付けさえ済ませれば無料で見学できるのでうれしい。
6台のミリ波干渉計がお出迎え
施設内に足を踏み入れる「ミリ波干渉計」が見えてくる。直径10mの反射板を持つ6台のパラボラアンテナである。
すでに運用を終えているので(その役目は南米チリにあるアルマ望遠鏡に引き継がれている)モニュメントとして残されている。
臼田のアンテナと比べればはるかに小さいが、6台が同じ方向を向いている姿には、はるかな宇宙へあこがれのまなざしを送り続けるイースター島のモアイ像のようにも見えてくる。
アンテナを移動させる際に使用する線路も残っている。ここまで幅の広い線路をあまり見る機会がないので、巨大建築物好きはこれだけでご飯が食べられるであろう。
後ろ姿が、こそこそ会話しているようで、どこかかわいらしい。視点を変えるといろいろな表情が見えてくるのも楽しいところ。
30年以上稼働している45m 電波望遠鏡
解説パネルを見ながら順路を進むと、敷地内でひときわ大きい45m 電波望遠鏡がある。
ミリ波の観測用としては世界最大口径で、1982年の稼働以来すでに30年以上も稼働している日本の電波天文学の要だ。無料の展示室もあり、電波天文学のまめ知識満載で小さいけれど必見だ。
臼田よりは一回り小さいが、その分、細部がよく見える。この日は、はくちょう座の電波源を観測していた(無料の展示室に今、どの天体を観測しているか掲示されている)。ちょうど180度くらい回転するところを見ることができた。巨大な建造物がゆっくりと動くさまは、どことなくいじらしい。PS2の傑作ゲーム『ワンダと巨像』を思い出して、個人的にワクワクしていた。
ロボットのパレードみたいな86台の電波ヘリオグラフ
電波ヘリオグラフは直径80cm(センチである)といきなり小さくなる。
太陽が出す電波を捕らえて、太陽の活動状況を調べるための画像を撮影している。
全86台がTの字に並んでいる姿は、ロボットの行進のように見える。
近くによるとかわいらしい形状をしている。まるで、肩をすぼめたロボットのよう。
撮影スポットによって様々な景色を見せてくれる。敷地のはじまで歩いて、八ヶ岳や45m電波望遠鏡を背景に入れて撮るのがおすすめ。
日本の電波望遠鏡一号機も
ほかにも、25cmから3mとサイズの異なるアンテナ8台がセットになった「太陽電波強度偏波計(50年以上運用されており今も現役)」や、日本初の電波望遠鏡の展示などもある。
写真は日本初の電波望遠鏡。戦後まもなくの1949年に国立天文台三鷹に作られたもので、パラボラ形ではなくような金属棒を使っている。現代のように自動的に追尾する機構はなかったので、スタッフが1週間に1度、手作業で位置合わせしていたという。
野辺山は行楽の途中で気軽に立ち寄れる施設で、臼田とは違って宇宙観測に興味がない人でも満足してもらえる施設ではないかと思う。
もし、近くに行くことがあったら、ぜひパラボラアンテナ尽くしの時間を楽しんでほしい。
私は、宇宙にあこがれた少年時代を思い出して少しせつなくなってしまった。
活動内容や見学時間等の詳細は公式サイトで。
国立天文台 野辺山宇宙電波観測所 公式サイト