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【歴史番組】 義経は京都でも「~という」世界の人だった  BS11『とことん歴史紀行 #30 源義経』

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リキマルラボ|屋根のカラス
 BS11 とことん歴史紀行 #30 2016年1月4日放送
 『源義経は死なず!語り継がれる英雄の謎~京都』

「とことん歴史にこだわって旅をすれば、今まで見えて来なかった風景が見えてくる」と石丸謙二郎が絶妙ので語り始めると、目はリビングのソファでゴロゴロする私の身体を離れ、映像の中の世界に取り込まれていく。
 すばらしくいいナレーションなのは事実だけど、『世界の車窓から』を長年見ている私は、パブロフの犬なみにしっかり条件付けされているのかもしれないとも思う。条件反射で、しっかり旅心が沸き立つようにされているのだ。絶対、あると思う。
 前にも書いたが、この番組のテーマは「紀行」である。だから、歴史6、風景4である。余計な案内人の代わりに、取り上げている歴史ネタとは直接関係ないけれど、せっかく行くのだから見所もしっかり紹介しますよ、というスタンス。
 このスタンスはナレーションとぴったり。歴史番組にありがちの「すごいでしょ、すごいでしょ」がないのが、ちょうどいいのだ。
 紀行番組だから、最後にかならず「食」が取り上げられる。
 その地の、有名店の料理長が、テーマに関連したステキな料理を出してくれる。とても気軽には食べられないような料理だ。紀行ものは、やっぱり食べ物を出さないと締まらない、ということでしょうね。私はいらないけど。

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すでにファンタジーの世界の人

 今回のテーマは、源義経をめぐる京都の旅。
 源氏の頭領・源義朝と絶世の美女・常盤御前の間に生まれ、将来を嘱望されたであろう義経の運命は、父が平清盛に敗れて逆転する。
 母は清盛の側室となり、兄弟は命までは取られなかったとが、ちりぢりバラバラにされ、義経は七歳にして京都の北にある鞍馬寺に閉じ込められる。義経にとって京都はまさしく因縁の場所だ。
 すでに伝説世界の住人である義経は、「義経が○○した、と言われる」「この○○は義経が○○した場所だ」という、そうならスゴイね、的なポイントがむちゃくちゃ多い。日本全国に義経ゆかりの場所はたくさんあって「義経が幼少の時のしゃれこうべ」などというジョークネタもにもなるほどだ。
 それは、生誕の地かつ因縁の地、京都でも同様だ。
 10歳にもみたぬ子供が、権力争いに負けた親に連座して、山寺に預けられる。世は平家の天下。これでは、明確な記録なんて残るわけもない。テーマが幼少の義経となれば、どうしたって「と言われている」だらけになるのも当たり前(眉唾だと言っているわけではありませんよ)。
 しかも、歴史上まれに見る悲劇のヒーローだ。
 いろいろな話が生まれるのは当然だし、それが伝聞と時の流れの中で変化していくのも歴史のダイナミズム。

「という」だらけのルートを眺めてみよう

 簡単に、「という」が頻出するルートを抜き出して見る。
 まずは、京都駅からほど近い稲荷駅へ。歌舞伎「義経千本桜」にも出てくる伏見稲荷大社へ。のっけからフィクションの世界。
次に、北へ移動して紫竹牛若街。ここは、父義朝の屋敷があった場所で、義経が産湯を使ったという井戸、胎盤とへその尾をまつったという胞衣塚(えなづか)がある。これらは、私有の畑の中にあって、通常は見ることができない。
 いよいよ次は鞍馬寺。
 紀行番組だから、義経とは関係ないけれど、人気のパワースポット、金剛掌まで紹介してくれる。
 資料館「霊宝殿」へ。義経のものと言われる木刀や太刀、甲冑の一部など。
 義経公供養塔は、幼い義経が預けられていたという場所。
 さらに奥の院参道へ。義経が飲んだというわき水、息次ぎの水を抜けて、木の根道へ。
 ここは根が露出していて、なかなかの迫力。ここで義経は剣の修行をしたところ、という。
 奥の院 魔王殿に到着。そばに置かれた石には、大きなひびが。これも義経が剣が傷をつけたと言われている。 
 鞍馬山の隣の貴船山にある貴船神社。奥宮は、自分が源氏の頭領だと知った義経が、毎晩訪れていたと言われている。
 丑三つ時に、平家打倒、源氏再興を祈っていたという。これが本当だとすれば、周囲の連中はびびっただろう。
 これと搦めて、天狗伝説についても簡単に。その正体は、陰陽師 鬼一法眼かもしれないという話も。
 いよいよ弁慶。当時、現在の五条大橋はまだない。清水寺から続く松原通りが当時の五条通りで、松原橋が五条橋。通りには二人の決闘の舞台といわれる五条天神宮もある。
 説明してくれる祢宜の方が、京都弁で立て板に水。ちょっと、あやしい感じがしてしまったのは、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。だって、例の剣を千本集める願掛けしていて、ちょうど千本目が義経で、という話だったし。
 弁慶との出会いの後は、義経の母常盤御前が暮らしていた北区紫野へ。
 ここにはかつて、「ごじょう」という橋がかかっていた。
 この町では、義経・弁慶の出会いの場はここだ、と信じているという。なぜか? それは、弁慶の腰掛石が残っているから。
 義経が母を訪ねたとき、弁慶がその石に座って待っていたという。
 次に、当時の料理の資料をもとに創作したという王朝料理を紹介。
 作法も昔のかたちを再現していて、十回に分けて出すフルコースだ。
 ご飯の盛り方とか、見た目にも面白い。
 最後は、平家を倒した後、京都に凱旋したときに住んだ六条と静御前と出会った運命の場所、神泉苑。
 もう、このあたりになると乙女ゲームの世界でドキドキしてしまうなぁ。

 ここまで「という」が続くと、それはそれでも、いつもの番組とは違う趣きが出てくる。
 京都の美しい景色と相まって、ファンタジーの世界を旅しているようだ(義経が出てくる女性向けゲームに関わっているので、余計、そう思うのかもしれませんが)。
 いつもの『とことん歴史紀行』とも違う雰囲気を醸し出していて、「そうだ、京都に行こう!」という気分になる回でした。


 今、義経といったら、この作品でしょう。
 『沈黙の艦隊』のかわぐちかいじの手による長編コミック『ジパング 深蒼海流』。新解釈の展開もさることながら、細部にもこだわった絵にも注目。この記事の執筆時点で13巻まで出ていて、なんか息を飲む展開になっています。どこまでいくんだろう。この調子で平泉まで行くんだろうか?


ジパング 深蒼海流(1) (モーニングコミックス)
トップ写真:(C)2015, リキマルラボ ※スタッフが撮影

  • この記事を書いた人
永才 力丸

永才 力丸(えいさい・りきまる)

ライター、編集者。音楽雑誌、パソコン雑誌、ゲーム攻略本の企画編集を経て、直近は、ゲームシナリオ、イベント企画構成も行う。自称、日本一、乙女ゲームに造詣が深いおやじ。

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