今日、本屋で見つけた「これ読みたい!」と思った本。2016/2/10版。
有隣堂(横浜ダイヤモンド地下街店)にて。
ラグランジュ・ミッション ジェイムズ・L・キャンビアス
■ラグランジュ・ミッション (ハヤカワ文庫SF)
私は地球軌道上を舞台にした話が大好物である。
もちろん、宇宙のはるか彼方、銀河の中心核付近で繰り広げられるスケールのでかい話も好きだ。様々な異星人が行き交う銀河連邦で、ちょっと立場の弱い人類ががんばる話も好きだ。
だが、己の頭上遙か上空、地上とはまったく異なる物理法則に支配される空間が実際に広がっている。しかも、そこは未知の世界ではなく、すでに人間の手が触れまくっていて、人工衛星のゴミ問題すら起こっている。地球とは切っても切れない関係にあり、銀河の彼方と比べると極めて泥臭いステージだ。
そんな近くて遠い世界で繰り広げられる物語がとても好きだ。
今日、本屋をただよっていたら、そんな本をずばり見つけた。
ハヤカワ文庫から出た『ラグランジュ・ミッション』だ。
あらすじを読むと、地球軌道上で暗躍する宇宙海賊の話らしい。原題も「CORSAIR」で、ズバリ「海賊船」。
2030年代、地球軌道上は月から運んで来る核融合炉の燃料「ヘリウム3」の争奪戦の舞台となっていた。
ヘリウム3を運んで来る貨物船を襲う宇宙海賊が横行しており、これを阻もうと各国の空軍がバトルを繰り広げていた。
私など「宇宙海賊」と聴くとハーロックかハン・ソロか、いわゆる宇宙船をあやつって虚空の海を飛び回る、ああいうタイプを想像する。
だが、本書に出て来る宇宙海賊はちょっと違う。
小説の冒頭4行を引用しよう。本書の核心が要約されている。
この宇宙海賊は、宇宙船にまたがって軌道上でドッグファイトしたりはしない。パイロットですらなく、天才ハッカーだ。
本書で描かれる軌道上でのバトルは、貨物船も無人なら、海賊船も無人(衛星なので当たり前だが)。計算とプログラムと遠隔操作で行われる極めて知的レベルの高いバトルなのだ。
ブラック船長と戦うライバルは、シャイアンマウンテン空軍基地に置かれた宇宙管制センター所属のエリザベス・サンティアゴ大尉。
二人は、冒頭からそれぞれの手元にあるディスプレイを通して、宇宙空間で対決する。
プロローグのバトルは、ブラック船長の勝利に終わる。敗れたエリザベスは宇宙管制センターの任を解かれ左遷されてしまう。同じ頃、アジアの片隅で動き出す謎の陰謀。
ここまでが30ページ弱。とてもスピーディで、思わず引き込まれるプロローグになっている。
ちょうど『レッドライジング-火星の簒奪者-』を読み終えたところなので、積ん読本の列に横入りしてもらうことにした。
本書のカバーや雰囲気は、テクノスリラーの傑作、藤井太洋『オービタル・クラウド』に似ている(カバーは、早川書房で似せたんだと思うが)。
この作品も、地球軌道上に仕掛けられた陰謀に、主人公たちがネットを駆使して、技術とフットワークで立ち向かっていくという、とても上質のテクノスリラー。
あらすじを読んだときピンと来るものがあって、ハードカバーで買って一気読みしたのを覚えている。大満足のエンターテインメントである。
電子書籍なら3分冊になっていて読みやすい。
■オービタル・クラウド(分冊版)1
■オービタル・クラウド(分冊版)2
■オービタル・クラウド(分冊版)3